2019年4月9日、1万円札をはじめとする紙幣や500円硬貨のデザインを一新すると発表されました。
政府によると、1万円札、5千円札、千円札の3種類の紙幣のデザインを変更する方針で、500円硬貨においても新技術を採用した新たなデザインに一新される予定です。
新元号の発表に次いで新紙幣・新硬貨のデザインも公開され、5月から始まる「令和」の時代に向けてどんどんと祝賀ムードが高まっていますね。
当記事ではこの新たな紙幣や硬貨に着目し、なぜわざわざ新たなデザインに変更するのかという理由や、これらの貨幣に凝らされた最先端の技術について解説していきます。
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新紙幣の新しいデザインと肖像画の人物について
まずは、1万円札、5千円札、千円札それぞれの新しいデザインや、採用される肖像画の人物についておさらいしておきましょう。
新1万円札の肖像画は渋沢栄一氏、裏面は東京駅・丸の内駅舎
新1万円札の表面の肖像画に採用されるのは、「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一氏です。
渋沢栄一氏は明治・大正時代最大の実業家で、日本で初めて株式会社制度を広めたり、初めて銀行や東京証券取引所を設立したりした、日本の近代化に大きく貢献した人物です。
設立に携わった企業や大学の数は500以上と言われており、第一国立銀行(現みずほ銀)や東京海上日動火災保険、王子製紙、サッポロビール、キリンビール、東洋紡績、帝国ホテル、秩父鉄道、一橋大学、日本女子大学などなど、挙げればキリがありません。
渋沢栄一氏なくして日本の近代化はあり得なかったとも言えるでしょう。
ちなみに新1万円札の裏面には、東京駅の丸の内駅舎がデザインされます。
新5千円札の肖像画は津田梅子氏、裏面はフジ(藤)の花
新5千円札の肖像画に採用されるのは、明治大正時代の女子教育家で「女性教育の母」とされる津田梅子氏です。
日本最初の女子留学生で、生物学や教授法を学んだ後に女子英学塾(現在の津田塾大学)を創立し、「男性と対等に力を発揮できる女性」の育成に貢献しました。
男尊女卑が蔓延していた日本で、女性の社会的地位の向上や女子の高等教育、英語教育に尽くした偉人です。
また新5千円札の裏面には、古事記や万葉集にも登場し、古くから広く親しまれている花であるフジ(藤)が採用されます。
新千円札の肖像画は北里柴三郎氏、裏面は富嶽三十六景より「神奈川沖浪裏」
新千円札の肖像画に採用されるのは、伝染病予防や細菌学の発展に大きく貢献し、「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎氏です。
北里柴三郎氏は「予防医学」の重要性を説いた人物で、ドイツ留学中に世界初となる破傷風菌の純粋培養を成功させて「血清療法」を確立しました
また日本に帰国してからは福沢諭吉などの援助を得て私立伝染病研究所を設立し、伝染病予防と細菌学の研究に取り組み、当時難病であった結核の予防と治療に尽力しました。
福沢諭吉の没後は、その恩義に報いるため慶應義塾大学医学部を創設したり、日本医師会や病院の設立などの社会事業にも従事・貢献しました。
このように福沢諭吉とは非常に関係性の高い人物で、北里研究所顧問の北里一郎さんは「柴三郎にとって紙幣になることは、福沢諭吉先生への恩返しだろう」と推し量っています。
ちなみに新千円札の裏面は、日本を代表する浮世絵である富嶽三十六景の中の「神奈川沖浪裏」(かながわおきなみうら)です。
浮世絵にあまり興味がない方でも一度は目にしたことのある絵ですよね。
千円札となることでさらに親しみの深い絵画となりそうです。
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なぜ紙幣や500円硬貨のデザインを一新するのか?
新紙幣に盛り込まれる新たな最新技術
それではなぜわざわざ紙幣や硬貨のデザインを新しくするのでしょうか。
その最大の理由は「偽造防止のため」です。
日本の偽造防止技術は世界でもトップレベルと言われており、紙幣の紙質やすかし技術は偽造がかなり難しいとされています。
これまでの紙幣には以下のような技術や特徴がありました。
- みつまたやアバカといった植物を利用した特殊な用紙で、独特な風合いと感触による偽造防止
- 料額や”日本銀行券”などの文字には、インクを高く盛り上げる「深凹版印刷」が使われおり、触るとザラザラした感触がある
- 「深凹版印刷」によるザラザラとした感触の識別マークがあり、目の不自由な方でも識別が可能
- 光ににすかすと肖像画が浮かび上がる「すき入れ(白黒すかし)」による偽造防止
- 角度を変えると見える画像が変わる「ホログラム」
- お札を傾けると色が変わったり光沢が出る「パールインキ」や「光学的変化インキ」の使用
- カラーコピー機では再現不可能な「マイクロ文字」
ここに加えて、新たな紙幣では次の技術が盛り込まれます。
- 角度を変えると肖像画が立体的に動いて見える最先端ホログラムの導入
- さらに高精細な「すかし」の取り入れ
- 紙幣を識別するための記番号を、現在の最大9桁から10桁に変更
これだけ高度な技術がたくさん取り入れられていたら、大きなコストやリスクを負ってまで偽造する気は起きませんよね。
新500円硬貨には新技術「バイカラー・クラッド」を導入
新500円硬貨はデザインだけでなく製法も変わります。
それが「バイカラー・クラッド(二色三層構造)」と呼ばれる技術で、文章で説明するより図を見ていただいたほうが早いと思います。
3種類の金属を組み合わせてやや複雑な構造としたことで、電気伝導率で偽造硬貨を判別するATMや自動販売機の偽造防止硬貨を高める狙いです。
また硬貨の端のギザギザにも新たに「異形斜めギザ」を導入し、部分によってギザギザの目がまわりと異なるというものです。
その他、硬貨の縁の内側に「JAPAN」「500YEN」といった微細な文字の加工も施す予定です。
紙幣にしても硬貨にしても、まさに日本の技術の粋を結集させて作られる最強の偽造防止貨幣となりそうですね。
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