2019年10月6日に発生した台風19号(ハギビス)が「スーパー台風」となって強烈な勢力を保ったまま日本に接近しており、ニュースでは「地球史上最大級」と形容されるほどの発達を遂げています。
また大西洋上で発生するハリケーンの規模を示す”カテゴリー”で表すと最大級の「5」に匹敵し、それどころか存在しない「カテゴリー6」に相当するという意見も出ているらしく、米国内では「スーパー・タイフーン」として紹介されています。
先日の台風15号による千葉県の被害を目の当たりにしたばかりの私たちにとって恐怖で気が気ではありませんが、この台風19号を形容している「地球史上最大級」「カテゴリー6」という言葉は抽象的でちょっとわかりづらいですよね。
今回は台風19号の「カテゴリー6」の意味や「地球史上最大級」という表現がどのくらい強力でヤバいことを表すのかを解説するとともに、過去最大規模の被害を出した「伊勢湾台風」とも比較してみました。
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台風19号の「地球史上最大級」はどのくらいヤバいのか?
まず台風19号を形容している「地球史上最大級」というインパクトのある言葉についてですが、これはちょっと適切ではない表現だと思います。
というのも、地球史上と言ってしまうと地球が生まれた約46億年前から観測を始めていたことになってしまうからです。
言うまでもなくそんな太古の昔から観測ができていたわけがありませんし、現代科学をもってしても億年単位で遡って「いつどれくらいの台風が発生していたか」を調べられませんから、ここは地球史上最大級ではなく「観測史上最大級」とするのが正しいでしょう。
SNSでも指摘されていました。
スポニチアネックスの見出しの「地球史上最大級」って「観測史上最大級」の誤訳でしょうよ。そもそもがその発言のソースも無いっぽいけど(気象庁やその他名のある気象予報士の方々もそんな風には煽ってないし、そもそもハリケーンでそれ以上の大きさのは幾つか存在するので)
— にかいち/完全燃焼Yes,I’mOK!! (@A_nikaichi) October 10, 2019
観測史上最大級はともか地球史上最大級は言い過ぎなのよね。
地球誕生当時の海洋形成期とかも地球史上には含まれるので https://t.co/yLqRt89nBk— 九龍真乙 (@qryuu) October 10, 2019
日本で気象を観測し始めたのは明治5年(1872年)のことで、世界気象機関(WMO)に加盟したのが昭和28年(1953年)、気象庁に昇格したのが昭和31年(1956年)です。
世界的に見ても世界気象機関(WMO)が設立したのが1950年で、WMOの前身となる国際気象機関(IMO)が創立されたのも1873年のことですから、まだまだ気象観測の歴史は世界的にも浅いんですね。
閑話休題。
地球史上最大級とはどれくらい強力でヤバいのかという疑問についてはこちらの写真を見ていただくのが一番早いと思います。
先日千葉県に甚大な被害をもたらした台風15号と、今回の台風19号の衛星写真を比較したものですが、その差は歴然です。
直径で3倍以上はあるのではないでしょうか。
日本列島を飲み込まんとするほどの大きさです。
世界的に見てもこの規模の台風やハリケーンは観測したことがないレベルだそうです。
地球史上最大級は言いすぎですが、中心気圧915hPa、最大瞬間風速75m/sという数字を見ても「観測史上最大級」であることは疑う余地がなさそうです。
台風19号の「カテゴリー6」(レベル6)はどのくらい強力なのか?
台風19号を形容している言葉でもう一つ気になるのが「カテゴリー5」や「カテゴリー6に相当」といった言葉です。
この「カテゴリー」というのは米国などにおけるハリケーンの強さを表す指標のことで、「1分間平均の最大風速」によってカテゴリー1からカテゴリー5まで強度を識別します。
わかりやすい図がありましたので転載します。
10月10日時点での台風19号の最大風速は中心付近で55m/s、最大瞬間風速は75m/sとなっています。
これを図のカテゴリーに照らし合わせると、最大風速ではカテゴリー3ですが、最大瞬間風速では風速70m/sを超えるカテゴリー5に該当します。
日本は「10分間平均の最大風速」で計測するのでこの判別は正確ではありませんが、もし台風19号が風速75m/sで日本を襲ったとき、未曾有の被害が生じる可能性があります。
風速70m/sを超えるカテゴリー5では「多くの建物で屋根が壊れる。海岸線の近くでは洪水が発生。」と書かれており、実際にニュースでは「東京23区の3割が浸水する可能性がある」とも報道されていましたから、米国の気象専門家による「存在しない(カテゴリー)6に相当する」という見解も出たのだと思われます。
それぐらい誰も想定したことのない台風だということですね。
海や河川の近くや海抜高度の低い場所に住む方は少なくとも数日分の食料を備蓄し、避難の準備をしておきましょう。
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台風19号と過去最強の伊勢湾台風を比較してみた
もし915hPaのまま日本に上陸すると伊勢湾台風よりも強力
1951年~2019年までに発生し、日本に上陸した台風の中でも最も中心気圧の低かった台風の上位5位を記した表がありましたので転載します。
日本の台風史上、最も多くの犠牲者を出した1959年の「伊勢湾台風」は表の2番目に記されていますね。
伊勢湾台風は約70年前に発生した台風で、今よりも災害に対する設備や国民の意識が乏しかったこともあり、犠牲者5,098人(死者4,697人、行方不明者401人)、負傷者3万8,921人という甚大な被害を出しました。
災害対策について定めた災害対策基本法は、この伊勢湾台風を教訓として成立したという経緯があるほど、日本経済的にも大打撃を被った台風でした。
ただ、この伊勢湾台風でさえも日本上陸時の気圧は「929hPa」です。
となると台風19号の中心気圧915hPaがいかに強力であるかがわかっていただけたと思います。
具体的に915hPaはどのような被害が出るのか
915hPaは気圧の単位であって台風の威力そのものを表す指標としてはわかりづらいので、実際の被害に影響しそうな「風速」に注目してみることにします。
今回の台風19号で観測されている「最大風速55m/s」で考えてみましょう。
実際に風速50m/sの台風に襲われた沖縄の動画がありましたので掲載します。
また風速50m/sで傘が飛んできた場合のシミュレーションをした動画もありました。
ガラス窓を容易に突き破っています…。
実際家の中にいても人が亡くなったこともあるそうです。恐ろしいですよね。
風速50m/sだと他にも、
- 瓦屋根の瓦なども吹き飛ばされる
- 電柱や街灯などが倒される
- 樹木が倒れる
- 車が横転する
- ブロック塀が倒壊する
などの被害が出るとのことです。
まとめ
以上、台風19号がどのくらい強力な台風なのかということについて解説しました。
観測史上最大の台風ということで、被害も大きくなる可能性が高まっています。
注意しすぎるということはありませんので、台風が接近したら絶対に外出せず、常にテレビやラジオの情報をチェックしておきましょう。
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